ブタのいる教室

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「ほら、何やってる。牛島と磯部は前に来なさい」
石田先生の言葉に僕らは座ろうとしましたが、そこで石田先生の言葉の意味が分からず顔をしかめました。
「ん？どうした？まだ時間は終わってないぞ、磯部と牛島は前に来なさいっていってるんだよ。まだ一人だけ順番で回っていないやつがいるんだろう？」
理解するのに時間がかかりました。きっと牛島くんも同じだったのでしょう。
「何ぼけーっとしてるんだ。さっきのお前達の遊びの続きだろ。一人だけやられていないなんて不公平じゃないか、ほら早く」
こんなにもクラスが一つになったのは初めてというくらい、一番の歓声があがりました。それは僕のクラスだけでなく、２組の列でも同様です。
「ハァ！？なんだそれ、もう終わったのをやるわけないだろ」牛島くんが石田先生に向かって容赦なく声を荒げます。しかし石田先生は相変わらず怯みません。
「なぁにいってんだ、牛島。よく時間を見てみろ。給食までまだ時間はあるだろ？先生は早く戻ってきただけジャナイカ」
確かに石田先生の言うとおりでした。チャイムがなるまで１５分ほど時間があります。
「ンなん関係ねぇよ！先コーが来たら終わりだろ？」
「俺が良いっていってんだからいいんだよ、第一牛島、男同士で決めたゲームにお前だけ参加しないのってのは、男としてどうなんだ？」
石田先生はいつもに増して挑発した態度で牛島くんを煽りました。
「そんな、だって、俺はそんなゲーム別にやりたくてやったとかじゃ...」
「みんなもそう思うよな？」石田先生の言葉に単純な生徒達は目をキラキラさせて頷きます。もうこうなると牛島くんは立ち上がるしかありません。
牛島くんが重い腰上げると、後ろにいた生徒は舌を出して吐くまねをします。
牛島くんのお尻の部分は彼の汗で濡れ、床に腰をつけた部分だけ色がはっきりと変わっているのが見て分かるからです。（もちろん他の生徒もみんなそうですが、牛島くんの場合は大きい分目立つのだと思います）
僕は座ろうとしますが、石田先生に手招きされて磯部くんと肩を並べて前に出ました。そんな僕らの肩を石田先生は鷲掴みにして屈んで、僕らだけに聞こえるようにそっと耳元で囁きました。
「立野は牛島くんをしっかりと固めるんだぞ。それから磯部、この前更衣室で大変だったらしいな？」
磯部くんは恥ずかしそうに静かに頷きます。
「じゃあ今度はお前の番だぞ。悔いの残らないようにしっかり思い知らせてやれ」
磯部くんも堅く頷きました。何かに決意したように。
「もう１０分もないんですケドー、てかもう教師に戻ろうぜみんな」牛島くんは体操座りする生徒達の前で、退屈そうにしながらも、ほんの少しですが落ち着きがない仕草を見せたりもしています。やっぱり生徒全員の前で電気あんまをかけられるのは、プライドの高い牛島くんには相当ハードルが高いプレイ（？）なのでしょう。
「１分のルールだったよな？時間なら大丈夫だろ」石田先生はそう言って僕らの背中を押しました。
「はぁ、ナンカツマンネ。つか生徒虐待じゃねコレ。かーちゃんに言ってやるかな」
「先生もキミのお母さんと一度よーく話したいくらいよ、一日かけてな」
二人のやり取りは相変わらずおもしろく、それだけ見ていても時間があっという間に過ぎてしまいそうです。
僕は牛島くんの背後に回ると、牛島くんはハイハイと観念した仕草を見せて床にお尻をペタンと（と言うかドスンと）付きました。牛島くんの汗で濡れた脇に腕を通して固めるのは、ある意味拷問のように感じましあ。牛島くんの柔らかな脂肪が肌にピタリとくっつき、その肌にくっついていた汗が僕の身体にも付着します。
気持ち悪そうに見ている女子も何十人といました。ただ牛島くんは前も言ったとおり、不潔なタイプではありませんので臭いもなく、何だか途中からお風呂場で赤ちゃん抱きかかえているような気分になって、僕も気分が落ち着いていきました。
「てめぇ後で覚えておけよ」牛島くんが僕だけに聞こえるようにそう言いました。「磯部と同じ目に遭わせてやっから？」
僕は何も答えずに、磯部くんを待ちました。磯部くんはやっと彼の太い両脚を持って彼の股をサイドに開かせている最中でした。牛島くんのあまり見たことがない格好に、生徒達は笑いを堪えるのに必死な様子でした。後ろからで見えませんでしたが、牛島くんは今にも飛びかかりそうな鋭い目つきでずっと磯部くんを睨み続けていたそうです。しかし、磯部くんの覚悟だって負けてはいませんでした。
磯部くんが足の裏を、牛島くんのの股間に軽く置いたとき、見物している女子生徒達から「ヤダー」と言う声があがりました。きっと牛島くんの耳にも届いていたことでしょう。
ただ牛島くんはそんな情けない格好になっても依然として磯部くんを威嚇していたようです。
「んじゃ。一分だったな、先生が計ろうか」
先生がストップウォッチを手に取り、「準備はいいかー」と僕らに尋ねます。誰も何も答えません。観客の１組２組の生徒も何一つ言葉を発しません。みんな待っているのです、牛島くんが懲らしめられる姿を、今か今かと待ち望んでいるのです。
笛の音が鳴った瞬間、磯部くんの足が小刻みに震え、牛島くんの大きな身体が反動で仰け反りました。僕は大福みたいな彼のボディをギュッと力を込めて押さえました。牛島くんは腕相撲などは意外と弱いとのことで有名でしたが、現在は体重も含めて暴れる分、小柄な僕にはかなりの負担になっています。しかし僕だってここで負けるわけにはいきません。石田先生がくれた最後のチャンスなのですから。（先ほどまであれだけ不満を言っていておいて申し訳ないのですが）
まるでプロレスの試合でも見るように生徒達の歓声はとてつもなく凄いものでした。気づけばみんな磯部くんを応援しています。
「磯部、潰せ潰せ！負けるな！」
「やれやれ！もっと早く足動かせ！休むんじゃねぇぞ！」
「磯部くん頑張って、愛理（篠原さん）のカタキ取って！」と、佐々木さんも身を乗り出して声を上げています。
「おい、立野。もっと逃げないように掴めバカ。お前も散々意地悪されてただろ！チャンスだぞ！」
クラスメイトにそう言われて僕は目が覚めました。今まで以上に力を込めて牛島くんの腕を掴みます。まるで闘牛場の暴れ牛の如く身体を捻らせる牛島くんを抱える腕に力を入れます。勢いを込めて胸の辺りを掴むと、牛島くんがグェッ！と声をあげました。
そして次の瞬間、牛島くんがゲラゲラ笑い始めました。
「ぐひゃ...ふっぐ...くすぐってえってば、やめろやめろよお..ブハ...ッ」
楽しそうに笑う牛島くんに僕は拍子抜けしてしまいましたが、磯部くんはまだ足を動かすのを止めませんでした。と言うよりもたったの数十秒でコツが掴めてきたのか、足の動きがより緻密になっていくようで、その巧みな振動は牛島くんの身体を通して僕にまで震えがくるようでした。
牛島くんはそれでも暫く大声で勝ち誇ったように笑っていましたが、突然急に力が抜けたかと思いきや「いつまでやってんだよ！！」と怒号を放ちました。僕は怯みそうになった腕に改めて力を入れます。
「お、おい！！も、もう一分経っただろうが？！」
気がつけば牛島くんの耳たぶの裏は真っ赤に染まっていました。さっきよりも肌に汗が多く湿っているように感じましたし、息づかいも非常に荒くなっていました。
「まだ４０秒だぞ」コレが見えないのか？とでも言うように石田先生はストップウォッチの表を牛島くんに見せます。
牛島くんの距離からそれが確認できたかはわかりません。牛島くんはもう一度高笑いを始めましたがすぐに、彼の笑い声はやんでまた大きな荒い呼吸に変わります。そして暫くすると目を堅く粒って、細い声で訴えるように初めて口を開きました。
「ング....！マジで...ちょ...やめろ...バカ！！....ンゥウッ...」
「どうした？お前、顔が真っ青だぜ？」
初めてそこで磯部くんが口を開きました。勝ち誇ったような顔で牛島くんを見つめています。もちろん彼の股間に強烈な追い打ちをかけながら。
「ぐ...ッテン....メェ！！....ハメやがったな...ちぐしょ....ンッ」
牛島くんは甲高い細い声で鳴き、はっきりとその苦しみは声色に乗って現れました。やっと今日のゲームの本当の趣旨を理解したのでしょうが、どうやら覆水盆に返らず...。彼は太っちょの体躯を痙攣したようにびくんびくんと二、三度震わせたかと思うと、最後に大きく背筋をピンと張って、石田先生の笛の音と同時にぐったりと倒れ込みました。
僕らの作戦は、「牛島くんのお漏らし作戦」でしたので、詰まるところこれは成功とは言えないかもしれません。ですが、これだけでも磯部くんの仕返しとしては十分過ぎるのではないかと思います。あの乱暴者の牛島くんをここまで追い詰めたのですから。
念のため（何となく気になって）僕は牛島くんのお尻の下を見ましたが、案の定それ以上のことは何も起こっていないようでした。５年生だし、当然のことだと僕は思うと同時に、深い罪悪感に苛まれました。復讐の為とは言え、僕らの年頃の子が大勢の前でお漏らしなんてそんな辱めは他にありません。
もし彼にそんなことが起きていたとしたら、牛島くんの学生生活がどう変わっていたか...。考えるだけでも恐ろしいことです。
そんな考えを巡らせていると、僕の身体は突き飛ばされ、一メートル後ろに僕は仰向けに倒れ込みました。顔を上げると、顔を真っ赤にした牛島くんが激しい怒鳴り声を上げて、磯部くんに飛びかかっているのが見えます。騒がしかった体育館が一瞬にして静けさを取り戻します。緊張感が漂います。磯部くんの身体に覆い被さって殴りかかろうとしている牛島くんを先生は無理矢理掴んで、力尽くで引き離しました。そして二人を自分を挟むようにして立たせました。
「今回のはあくまでも遊び、と先生は考えることにする。電気あんまなんて先生が子供の頃からもあったことだからな。ただし、これがお前たちが気に入らない遊びだと思うなら二人とも二度とやらないことだ。どうだ、これでいい勉強になったろ？」
立ち上がった二人はもう顔も合わせようとしません。嫌なムードだけが体育館に流れます。
「強いものに立ち向かうには相応の度胸がいる。磯部と立野に拍手。あと、一分間も覚悟を決めた牛島にも、みんな拍手！」
石田先生がそう言ってまとめると、生徒からは拍手が起こりました。うまいまとめ方をするななんて思いながら、僕もやっと立ち上がりました。拍手によって磯部くんの表情は緩んで笑みも浮かんでいましたが、対照的に牛島くんの表情には未だに歪んでいました。
確かに拍手されるのは実際気分が悪くなるものではありませんでしたが、教室に戻ってから一体僕らはどんなひどい目に遭わされるのだろうと、想像すると怖くなりました。最低でも三階の窓から突き落とされる覚悟はする必要があるかもしれません。
「じゃあ、ランチまでもう少しだな解散するか」
石田先生がそう言った時でした。前にいた男子生徒が、何かに気づいたように声をあげます。そして、近くにいた女子生徒も何かに気づきはっと口を手で押さえました。
やがて彼らはコソコソと何か囁き合い、笑い声が所々と響きます。ひょっとして安堵した磯部くんが歓喜のあまり泣いてしまったのではないかと僕は不安に駆られ、磯部くんの表情を盗み見ました。が、違いました。磯部くんは呆然と牛島くんを眺めており、みんなも牛島くんに視線をやって声を殺して笑っています。
「あ？ンだよ？何がおかしい」牛島くんがまだ怒りの収まらない感情を剥き出しにして前列の男子にガンをつけました。
「いや...その...」彼は口ごもります。
「ハア？その、じゃねえよ。さっさと言えよ。ぶっ殺すぞテメェ！」
彼は黙りこくりましたが、他の生徒は依然として騒いでいます。自分が笑われているのを理解した牛島くんは血相を変えて全員を睨み付けました。「んだぁ！？ナニ、笑ってんだよ！言えっつーの！！」
「アソコだよ、アソコ」その声の主は高藤くんでした。高藤くんは余裕の表情をして、そして自分の足をちょっと開くと股間に指をちょいちょいと指して指示しました。僕は倣って牛島くんの股間の部分に目をやります。そして開いた口が塞がらなくなりました。
牛島くんの水着パンツの前面の部分の色が、なんと変色していたのです。
そこはちょうど股間のところ、それが何を意味をするのかは言わなくてもみんな分かります。
「げっ！こいつ漏れてる！」
しかしそれをわざわざ言葉にして発したのは、他の誰でもなく磯部くんでした、笑いを押し殺していた生徒も、我慢できずに吹き出して爆笑が沸き起こります。
「あ、え...ち、ちが....」
牛島くんは慌てて股間を押さえましたが、「おしっこ触ってる！キタネー」と声が響くと慌てて手を引っ込めました。恥ずかしそうに水着を引っ張ったり、こすったりと必死です。ここまで慌てた牛島くんを見るのは初めてだったかもしれません。
「これ、ンなわけねーだろ、あ、あ、汗に決まってるだろ..汗だよ...ちげーよ...！」
しかし汗にしてはそれはあまりにも不自然な付き方で、見苦しい言い訳にしか聞こえません。水着の前に付着した直径一センチほどの丸形のシミは二カ所に分かれて付着しており、内面からじわりと浮き上がっているような、如何にもな出来映えな形なのです。
「マジで、なんか付いてんだけど！」
「もしかして...牛島のやつ電気あんまでちびっちゃったトカ？」
生徒が口々に牛島くんを冷やかします。見慣れない光景でした。
「うっそ、信じられない！なにあれ、ヤダもう！」女子からもきゃあきゃあと抱きつき合って悲鳴を上げます。
「ちがう、ちがうって！だ...だから、これは...だから、その...」
暫く静止して観察していた石田先生でしたが、そこで初めてポッケから白いハンカチを取り出すと素早く牛島くんの前に回って、彼の股間の部分にそれを押しつけてゴシゴシと摩り付けました。
「...あ、だ！...やめ....ッ！」
牛島くんは慌てて腰を引きましたが既に遅し。石田先生は悪戯っぽい笑みを浮かべると、牛島くんのアソコに擦りつけたばかりのハンカチをみんなに見せつけるように、牛島くんの頭上ででヒラヒラさせました。
この時の男子女子の騒ぎようと言ったら、例えるものもないくらい物凄まじいものでした。
石田先生の手にした真っ白のハンカチの真ん中部分には、遠くからでも分かるくらいにしっかりと黄色く染め上がっており、体育館外から僅かに漏れる風でヒラヒラと揺れるハンカチは、まるで日本国旗の中央部分だけ黄色く染めた恥辱の旗のようにも見えました。（お国には大変侮辱的で申し訳ありません）

「これは何なんだ？」
「...し、知らねーよ、やめろ！やめろよ！！」
「ここにオシッコが付いてるのが分からないのか？」
「し、知らねえってば！も...も、もういいじゃねえか！」
そう言う牛島くんの瞳は若干潤んできています。それでも尚、ハンカチに飛びつこうとする牛島くんの手を石田先生はさらりと交わすと、にまーっと勝ち誇った笑みを浮かべ、無防備な彼の丸い頭を軽く小突きました。
「遊びが過ぎるからこうなるんだゾ。ったく...５年生にもなって恥ずかしくないのか？後で換えの水着を渡すからそれに着替えてきなさい」
こうして牛島くんは小学五年生でお漏らしと言う、きっと彼の人生で最大の不名誉を与えられて学園生活をスタートすることとなったのです。めでたしめでたし。