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ケータイ

学校に携帯電話を持ち込み禁止とする。そんな規則を緩和させたのは生徒会だった。元より全学年生徒対象のアンケートのほとんどの回答が携帯電話についての不満だった。隣に位置する猛符中学では携帯電話を授業中使用していても怒られないという噂が校内に広がったことからも、教師は生徒の意見から目を逸らすことができなかった。生徒会会長が教師に携帯電話の持ち込み許可を提案し、ついにそれが先週の教師の会議で議決された。
携帯電話持ち込み可という新しい学校制度に誰もが心を躍らせたが、小型電化製品に慣れない少年は少なからずいた。携帯をまだ買ってもらっていない少年だ。

巧海の家は貧乏というわけではなかった。ごく一般的な家庭で、人と同じような物を食べて育った。でなければ、彼の体は人よりも肥えていないだろうし。プールで浮き輪につっかえる心配もなかったはずだ。
巧海は生まれつきデブだった。肥えていた。ふくよかな腹を持って生まれた少年だった。幼く澄んだ目つきは周囲の人々を魅了させた。しかし彼の母親には巧海のそんな甘えた視線は全くと言っていいほど通用しなかった。
「高校に入ってからでいいでしょ」
「クラスのみんな持ってるし」
「みんなはみんな。うちはうち。何度言っても無駄。買いません」
結局何度頼んでも携帯を買ってもらえず、巧海は学校で友人同士が携帯を触っているのを恨めしそうに眺めていた。

その日は、雨だった。湿った空気に肌が触れるのが嫌で、数学の授業が鬱陶しく思えた。いつもより長く感じる。授業が終わると、わっと生徒達は席を立ったが誰も外には出ようとしない。廊下にさえも。
携帯を広げて、騒ぎ出す。巧海のように買ってもらっていない生徒もいたが、彼らは小型電子機器をいじる生徒の周りに集まって塊を作る。
「何かしようよ」
いつまでも携帯を眺めている友人に耐えきれず巧海は声を掛けた。彼も巧海と同じく携帯持っていない組である。
「遊ぼって」
熱心に小型画面に食い入るその友人の横顔に巧海は苛立ちを感じた。何が携帯だよ、と思った。ただの玩具じゃんか。どこが面白いんだよ。ぼそりと呟く。負け惜しみのつもりだった。そしてもちろん普段なら絶対に人前では言えない皮肉だった。全員の視線はあっという間に、巧海へと注がれた。
運が悪かったとしか思えなかった。その日。携帯の新機種を手に入れた生徒、瑠斗は買ったばかりの携帯を学校に持ち込んだことから、彼を囲んだ男子生徒からは偶然にも異様な盛り上がりをみせていた。誰もが新機種の携帯のデザインと機能の虜になり、熱心に新機種を買ったばかりの瑠斗の自慢の入り交じったトークに耳を傾けていたのだ。
そこへ入っていったのが惚けたような顔をした巧海だ。携帯の何がわかるんだよ、と他生徒が口々に巧海を非難した。「持ってないからって、僻むなよ」そんな声も飛ぶ。
「いや、別に。そんなつもりじゃ…」
元々気弱な巧海は人の携帯に文句を付けるつもりはなかった。ましてやクラスでもリーダー格の瑠斗に対してなら尚更だ。
「ただの玩具なんだってさ。そんな玩具も持ってないんじゃん、お前。携帯の使い方なんて知らないだろ」
知っていた。姉の携帯電話なら隠れて触ったことがある。基本的な操作知識程度なら巧海も持っていた。しかしいつの間にか、うんとも言えない状況になってきているのに巧海は気がついた。雨のせいだろうか。じめりと湿り気のある空気。些細なことでこみ上げて来る苛立ちを抱えているのは、自分だけでないと気づく。
「そう言えばさー。瑠斗くんの携帯ってカメラ機能良かったことない?」一人の少年が偶然言った。
「そうそう、それ目当てで買ったんだよな。千二百万画素。超綺麗だよ」
ピピッと電子音が響いて、巧海は目をぱちくりとさせた。瑠斗の持っている携帯のカメラが自分に向いている。顔を背けたが大分遅かった。
「うわあ。豚顔だ」瑠斗がニヤニヤしながら笑って、画面に映し出された巧海の表情を周りに見せる。ぽかーんと口を開いた巧海の表情は彼らが共に言う「間抜け面」にぴったりと当てはまっている。
「やめてよ」
「やめないよ?」
言葉通りに彼はまたカメラの音を鳴らした。偶然巧海がカメラを意識して背を向けたため、今度は画面に巧海の尻が映ってしまう。どっと生徒達が笑う。
「でっけぇー」
「豚尻じゃん。豚尻」
「見せて見せて。うわーきんもー!」
制服の上からでも下半身のお尻の部分だけ撮られたことは巧海にとって莫大な屈辱だった。「消してよ」と、携帯を片手にケラケラ笑っている瑠斗に食いつく。
「もう保存しちゃったもんねー」
子どものような声をあげて、少年は巧海を煽った。
「いいから、消して。お願い」
「しつこいデブだな!」
割と大人しめの性格の巧海がしつこく瑠斗に歩み寄ったためもあり、瑠斗は怒り任せに彼の腹をシューズで蹴飛ばした。
バランスを崩した巧海は背中から後ろに倒れ、床に尻餅をつく。反動で近くの椅子が横向きに倒れ、大きな物音が教室に響いた。クラス中の視線が巧海、そして瑠斗へと注がれる。シンと静まりかえった教室の真ん中で、巧海は瞼に僅かに涙を浮かべていた。

「あいつ、先生に言うんじゃね?」
昼休みの時間になった時のこと。携帯のゲームを遊んでいる瑠斗にメガネを掛けた少年がそう声を掛けた。
「それくらいで言うか?ふつー」
「あり得るって、あいつ。妙に真面目だもん」
隣の生徒の声がまたする。ああ、死んだ。画面にGAMEOVERと赤い文字が浮き出る。携帯を徐に閉じ、そうだな、と瑠斗は呟く。
「でも、やばくね?先生に言われたら携帯持ち込み禁止になるぞ」
「でも生徒会で決まったことだろ?」
「クラス単位でならあると思うぜ。授業中にメールやってた三年のクラス。もう禁止になったらしい」
まだ携帯を持ち込み可になってから二週間も経っていない。だとしたらどれだけ悲惨だろう。瑠斗は心の中でそんなことを考えた。やっと待ち望み、自分たちの手で変えた規則だ。今更携帯を持ち込み不可にされるのなんて真っ平だ。常日日頃から携帯電話を握りしめている瑠斗自身、多数の生徒に持ち込みを許可にするように呼びかけたのは事実だった。実際、数十票ほど不正も働いた。バレていないと思う。
「じゃあ、あいつがチクったら禁止ってこと?」
「それ、ウザいな。んじゃ、先生に言わないように言っておくか」
「聞かないだろあの豚。やるなら、もっと脅迫めいたことで口止めしないと」
瑠斗の隣の椅子に座っている男子生徒が思いついたようにそう言った。
「どうやって?」
「さっきの巧海の尻。ばらまくとか」
「あんなん誰かわかんねーよ」
「あいつの豚顔もあるじゃん」
「そんだけで口止めになるかー?」
適当に思いついた案を数人の生徒で出し合い、ふざけたように笑い合う。本気で言っているようで、誰一人として本気にはならない。誰もが暇つぶしの雑談のように思っていた。しかしいつの間にか、提案の中身は徐々に過激な物へと形を変えていく。
それだったら口止めにはなるだろ。いや、無理だろそれ。でもやってみたら、面白くないか?バレたらまずいって。口止め用にやるんだろ、だから大丈夫だって。

————やっちまおうぜ


五時間目も終わり、最後の休憩時間がやってきた。相変わらず雨は止まない。むしろ酷くなっているかもしれない。じとっと湿った制服が嫌で早く家に帰りたいと思った。あと約一時間。巧海は時計に目線を送る。その時だった。
数人の生徒が巧海の体を押さえつけた。
「………ぅわっ」
巧海の椅子がひっくり返り、巧海は床へと転倒する。クラス中の男女が巧海に注目する。本日二日目の大転倒に恥ずかしがりながらも体を起こそうとしたが、その行為は無駄に終わった。床に付いた両腕が後ろから押さえられた。
「捕まえたぞ!」興奮した声が響く。
「なっ……なに!?」
呆然とした表情を浮かべながらも、押さえられた腕を振り払おうと巧海は体をよじった。しかし彼の腕の力が一枚上手だった。巧海は完全に身動きができない状態だ。
「カイボウ始め!!」鼻息を荒くした男子生徒たちが一斉に巧海の制服に手を掛けた。
「な……何するの!?…まっ…て…!!」
制服のボタンが外され、巧海の上半身が捲り上げられる。カッターシャツが見えると、強引にそれも捲り上げるられた。丸みを帯びた腹が露わになり、騒ぎ声を高くする生徒達からは笑いが飛ぶ。
「ポヨンポヨンの腹が出ました~!」
またドッと笑い声。「うっそー。やだぁ」と、女子も固まって上から暴れる度に揺れる巧海の腹を眺める。
「や……マジ、やめてっ…よ」
「おいおい。巧海くん。キミ、シャツから乳首浮き出てるぞぉ?」一人の生徒の声でクラス中がまた笑い声に包まれた。
全く何故自分がこんな目に合っているかさえ分かっていない巧海はひたすら床で足をジタバタさせた。しかし彼の短い足によって机や椅子が蹴り飛ばされ音を立てれば、返って注目が集まるだけだった。クラス全員の視線が集まる中、誰も腹を出して暴れる太った少年を助けようとはしなかった。むしろこんなにも珍しい光景に遭遇したことを光栄に思っているようにも見えた。そうでなくても、確実に巧海の目線からはそうだった。誰もがにやついた顔を浮かべて巧海の藻掻く様子を楽しんでいるように伺えた。
「巧海~。お前さ、携帯のことセンコーにチクるつもりだろ?」
瑠斗が片手で携帯を開いたり閉じたりさせながら、上から巧海を眺めた。冷たい目が笑っている。人をバカにするときの彼の特徴だった。
「言っとくけど、そうはさせないぜ?お前の恥ずかしい写メとって、みんなにばらまいてやるからさ。そうすればお前もセンコーに告げ口なんてできねーだろ?」
「そ……そんなこと…しないよ!ぼく、そんなこと!!」
あまりに予想外の事を言われ、巧海は愕然としつつも体を横にねじ曲げた。しかし、すぐに数人によって仰向きに固定される。またしても大きな腹に窪んだ臍が露わになり、生徒が沸き上がった。
「しなくても、するかもしれないだろ?保険だよ。ホ・ケ・ン。それにいいって、俺お前のこと前からムカついてたしさ」
「…そ、そんな」
「それにお前ブリーフだったろ?ちょっと確かめたいこともあったしさ。なぁみんな?」
彼の確認の声が合図の引き金になったのだろうか。阿吽の呼吸のように、一斉に彼らは巧海のベルトに手を伸ばした。
「だ、ダメ。そ…それはダメ!!」
もしかしたら既に何をされるか想像は付いていたかも知れない。床へ押さえられた時から瑠斗は勝ち誇ったような笑みで巧海を見下ろしていたのだから。「マジ、ダメ…!!」巧海は発狂した。ベルトが外されズボンが腰から抜き取られるのを感じる。もう一度発狂した。「やめてッ!!!」
「はは。こいつブリーフ丸見え~」
「だっせーなぁ。お前この学校で一人だけだぜ?ブリーフなんて」
「ま、体育の時間。着替える時から分かってたけどさ。女子にも見られちゃったでちゅね~」
一斉に冷やかし声が飛んだ。抜き取られたズボンは宙に放り投げられ女子生徒の机の上に落ちる。止まることなく悲鳴は鳴り続けていた。騒ぎの広がりを恐れた男子生徒が開いている窓や扉を急いで閉める。完全に教室を密室状態にし、巧海のカイボウに集中させるよう働きかけたのだ。
「さぁて。こっからだよな」
足を押さえているメガネ少年が巧海のブリーフのゴムを片手で軽く持ち上げて音を鳴らした。パチン、と言う音と同時に女子が手で目を覆ってキャッと叫ぶ。「フライング、フライング」と男子生徒たちが訳の分からない事をいいながらニヤニヤしている。
「ほんと……やだよぉ…やめてよ……許してよォお!」
恐怖と緊張の冷や汗を首元に浮かべながら、巧海はひたすら首を振り続けた。これだけは嫌だ。嫌だと必死に願いながら、クラス中の生徒に懇願する。「お願い…お願いします」
「ダメだ」
きっぱりと、はっきりとした口調で瑠斗がそう明言した。やれ、と顎で指図する。そしてその瞬間ついに巧海のパンツのゴムに指が掛かった。
せーの、と言う声でブリーフが一気に膝元まで引き下げられる。男子の笑い声と女子の悲鳴が同時に上がった。そして巧海の悲痛の声が。密閉された教室内で反響する。それもそのはず。彼の股間にぶら下がっているモノ。いや、ぶら下がっていると表現していいか分からないほどちょこんと付いた代物は、皮に包まれ、小さく縮こまっていたのだから。
「何だこれ……ちっさぁあ!!」
「ヤバイ、ヤバイ!!これヤベーって!包茎じゃんコイツ」
「いやいや。いろいろとおかしいだろコレ。チン毛ないじゃんこれ!!どうなってんの!?」
次々と繰り出される罵倒の嵐の中、女子も負けていなかった。悲鳴と共に巧海の縮こまった股間へ向けて感想が溢れている。
「な…なによこれ……」始めにそれを言葉にしたのは一番近くにいた女子生徒だった。「……やだ。小さい」
涙を呑んで、巧海は必死に歯を食いしばった。みないで、と彼は言った。「見ないで!!」
しかし瑠斗たちの計画はまだ始まりに過ぎなかった。元より真の計画は巧海のカイボウではないのだから。ここからが、本番だ。
「みんなしっかり見とけよーー!!」巧海の両足を無理矢理押さえつけながら生徒達は騒いだ。縮こまった性器を露出させた、肉の塊のような生徒を笑い飛ばしながら、計画は次の段階へと移行する。
「今から、巧海のヌード撮影しちゃいます!!」
言葉と同時に無理矢理巧海の両足は開脚させられた。まるで見て下さいと言わんばかりに、大きく左右へ開かさせられる。まるで赤ん坊がオムツを替える時の格好のようだった。オムツの代わりに中途半端に脱がされた真っ白なブリーフが右足に掛かっている。
「いいぞ、瑠斗!!」
「シャッターチャンスだぞ!やれ!やれ!」
興奮した彼らの言葉に了解、と瑠斗が一声上げ、携帯を開いた。素早くカメラの画面に切り替え、カメラのレンズの位置をを太鼓腹と小さなアソコを露出させた巧海へと向ける。
「ぁぁァああああ!やだぁあああアア!」
巧海の叫び声と同時にカシャリと携帯のシャッター音が鳴り響いた。
「ははは、コイツちんこ撮られてる!」続けざまに沸き上がる笑い声。手の空いている生徒は瑠斗の携帯の画面に顔を寄せて、手を叩いて笑い合う。
「うわ。超エロイぞこれ。股開いたこの格好。みんな見ろって」
「ふつーに綺麗に撮れてんじゃん。巧海のチンコ。ツルツルの金玉もばっちりだな」
「だろ?千二百万画素の包茎チンコだぞ。これ」
「印刷すればポスターもできんじゃね?廊下の掲示板にでも貼り出そうぜ」
ざわめきは終わらない。次から次へとシャッター音が鳴り響く。「拡大しても綺麗なんだよなぁ」と瑠斗は巧海の股間全体をもカメラに収めていった。
「いい感じだぞ。足に引っかかってるブリーフもちゃっかり映ってるしな」
「ここの拡大だけ見たら、小学生って思っちゃうかもな」
「はは、確かに。てか、俺にもその写真送ってよ」
「いいよ。後で全員に回すからさ」
得意げに瑠斗は笑った。そしてもう一度カシャリとシャッターを切る。ふと顔を上げると他生徒も携帯を取りだし、瑠斗と同じように巧海の情けない姿を撮影していた。
「何だよ、お前ら。後で俺が送信するって言ってるのに」
驚くべきことは数十人が一斉に巧海の股間を撮影していることよりも、その中に女子が混ざっていたことだと言える。考えてみれば女子の方が携帯の所有率が高いのだ。その中でも髪を茶髪に染めたリーダー格の少女、美咲は誇らしげにこう言う。
「言っておくけど。カメラってね。画素数で決まるわけじゃないから。メーカーが使ってるレンズにも差が出るのよ。いくら画質が多くても意味ないのよ。トー○バ製のカメラなんて」
ストラップのじゃらじゃら付いた携帯を持って、彼女はチングリ返し状態の巧海の股間の目の前で徐に屈んだ。「はは、ちっちゃい」と、笑うことも忘れなかった。携帯を巧海の股間に近づけチャリーンと電子音を響かせる。突きつけた美咲の携帯の画面にはより鮮明な蕾のような巧海の性器が映しだされていた。
「うわー。これも綺麗だな」
「玉のシワも見えちゃってるぞ。おもれーー!」
男子生徒だけでなく女子生徒も一気に盛り上がる。「てか、巧海。女子にちん写メ撮られてるとか終わってるよなぁ」と、また笑い声。
そして、美咲の行動により一気にクラスの空気は変わっていった。次々と生徒達はポケットから携帯を取りだし、カメラの的を巧海の股間へと向けるのだ。
「こうなったらさ。誰が一番巧海のチンコ綺麗にとれるか勝負しようぜ」
「綺麗に?可愛いの間違いだろ。ぎゃはは」
巧海にとって十分の休憩時間が長く感じられたのは間違いなかった。何十人と生徒達が携帯を向け、撮影を同時に始める。
抵抗もできずと、巧海は股を広げられたまま連続するカメラの音を聞いていた。カシャリ、カシャリと耳に。肌に感じていた。
「やだ……もうやだ…撮らないで…うぐぅ…」
涙が頬を伝う。泣き顔に向かってシャッターを切られた。カシャリ、と。

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