2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

牛の聲

昔話をします。
僕の小学校ではその昔、牛島くんと言う名のぽっちゃりとした少年がクラスを仕切っていました。
本人曰く自称痩せ型だそうです、実際は普通より、少し肉のついた子供らしい体型だったと思います。
牛島くんはちょっとしたガキ大将タイプの子で、愛嬌のある顔とは裏腹に、命令口調で物を言ったりと、あまり評判は良くありませんでした。学年に一人、二人いそうな子です。

僕は小学校から彼と知り合うことになりましたが、幼い頃から僕は牛島くんが怖くて仕方がありませんでした。
だから、僕や他の同級生のみんなも彼の言うことは何でも聞いていて、ほとんど言いなり状態だったんです。
そんな牛島くんの行動は学年が上がるごとにエスカレートしていって、毎回弱そうな子をイジメのターゲットに選ぶと、とことん追い込むってスタンスでした。ペンをへし折るとか、シューズをゴミ箱の中に突っ込む...。
細いガリガリのひ弱そうな僕みたいなタイプの子は真っ先に選ばれるんです。椅子の下に画鋲をばら撒くとか...当然のようにやってくるんです。

僕もトイレの個室に閉じ込められてホースで水責め?みたいなことをされた時は全身びしょ濡れになってわあわあと泣いてしまって周りから冷やかされたり、もしくは同情された目で見られたりなんて...酷い目に遭いましたよもう。
牛島くんのケライと言うものになればそこまで酷い目に合わないからと言う理由で、彼についてく子達は中にはいたみたいですが、牛島くんは退屈になると仲間内からターゲットを選出して嫌がらせをしていたみたいで...ほんとにどうしようもないって言葉が正しいくらいの子だったんです。

聞いた話だと、一度仲間の人が陰で牛島くんの陰口をたたいた子がいたみたいで、その子に仕返しにセミの抜けを殻を食べさせたって言う噂も広まったくらいです。(それが本当かどうかは知りませんが、その後から彼に対する悪口は気かなくなったのも事実です)
あとは唯一周りが支持してたのは女子へのスカートめくり(当時はスカートの子ほとんどだったので)もちろんこれには泣いちゃう女子もいたけど、牛島くんは先生に怒られてもケロッとしてるタイプだったので、女子も先生にチクっても無駄だと思ったのか、牛島くんがいない時に陰でコソコソと彼の悪口を言っていたようです。

そんな牛島くんが同級生の子に懲らしめられたのは、僕らが小学校4年生になった時の夏でした。
その頃にちょうどクラスに濱地くんって(なかなかのイケメン)の男子生徒が学校に転入してきたのです。
実は彼は小学校に入学する頃前までうちの地域に住んでいましたけど、親の用事で東京の学校に転校していってしまって、4年生の夏に家の用事のためにうちの学校に数週間だけ通うことになったみたいです。(詳しい話は知りませんが)
身長は残念ながら高い方じゃなかったけど、牛島くんもどちらかというと背は小さめな方だったので、だいたい彼と同じくらいの高さだったかと思います。元から運動神経の良かった濱地くんは幼い頃と変わらず足も速くスポーツ万能で、人への気遣いもできる子だったので、男子からはハマちゃん、ハマジーとの相性で呼ばれてすぐに親しまれ、女子からはすぐに憧れの存在へとなりました。

話を戻すと、牛島君がひどい目に遭ったのは小学4年生の最後のプールの授業前の体育の時間のことでした。
僕の学校はとても特殊で、プールの授業前に体操を含めて水着で体育館に集合して、そこで体慣らしを含めた体育の授業を終えてから次の時間にその足でプールに入るというちょっと(?)変わったな時間割があるんです。
体育好きの子にとっては神がかり的な時間割ってわけです。今だと少し煩いかもですが、テレビですら子供の裸なんて気にされない時代だったので、水着で運動なんて問題になる訳もなく、もちろん僕ら子供にとってはプールがある日は、完全に気が抜けた日みたいな。本当に気楽に過ごせる日だったりしたんです。
ただ実際体操だけで時間を潰せるはずもなく、早い時ではたった数十分でやることもなくなってしまうので、先生もホームルームの代わりに使ったり、つまらない雑談を挟んで時間を稼ごうと躍起になるんです。
それでも尺が余った時は先生も諦めて席を外して、体育館横のプールの方にのんびりと歩いて行って、次の授業の準備に取り組んだりするので、結局は子供だけの騒がし~時間が始まるんです。

普通だったら楽しい時間になるはずなんですが、僕のクラスの場合、牛島くんがいるのでなかなかそうはいかず、毎年体育館で先生がいなくなると、テンションの高い牛島くんの追いかけられて、仕舞いに背中からのし掛かられ、押しつぶされるっていう、なんとも屈辱な洗礼を、ひ弱な男子は全員味合わなければいけないんです。
牛島くんはぽっちゃりしている割には汗っかきではないし、(子供だからでしょうけど)不潔感のある子じゃないのですが、それでも帽子と水着一枚。ほぼ裸。
そんな格好で、肉付きのいい体型にのしかかられて、プロレス技をかけられたりすること自体、子供の僕らにとってもう不快でしかなくって、4年生になった頃も目をつけられた男子生徒は命がけで逃げ回っていました。

プール最終日の体育の自由時間と言うこともあり、その日の牛島くんのテンションは誰にも止められませんでした。色々な子に跳び蹴りをいれたり、倉庫から勝手にボールを取り出しては、女子に向かって投げつけては女子に非難され、ペロッと舌を出しておどけているのです。
そうして、もう誰にも止められない牛島くんの最後のターゲットに選ばれたのは、不運にもこの僕で、僕はテンションマックスの少年から逃げ切るためにも、無我夢中で体育館内を走り回り、やがて舞台裏の器具室まで追い詰められた時でした。
埃っぽい室内で、水着一枚のぽちゃ少年に追い詰められて半分泣きそうになっているそのとき、勝ち誇って距離を詰めてくる牛島君がものすごい音を立てて床に転んだのです。
そこには濱地くんと彼に仲の良い磯部くん、高藤くんが横にぴったりとくっついていました。濱地くん以外の二人は完全に大コケした牛島くんに目も向けられないくらい
びびっていましたが、濱地くんは起き上がって今にも飛びかかろうとしている牛島くんを見下ろして
「仲間をイジメてんじゃねーよ」と強く言い放ったんです。(それだけで僕には格好よく映りました...)
そして一心不乱に飛びかかる牛島くんを濱地くんは鮮やかに交わすと、彼の背後に回って背中にのしかかり、首を絞めました。
「お前幼稚園でピーピー泣いて漏らしてたくせに、いばってんじゃねーよ」
「...うるせえよ、早く東京に帰っちまえよ」
「お、威勢いいな。またあの時みたいに泣かすぞ、この野郎」
そう言う濱地くんはちょっと余裕そう。牛島くんは倒れた姿勢のまま首だけ斜めに曲げられて息をするのも苦しそうでした。
「フン、やってみろよ。東京のママに捨てられた濱地ちゃん〜」
ふざけた口調で牛島くんが唄うようにそう言った時でした。
濱地くんの動きがピタリととまり、急に彼は無言になりました。
(本当に泣いたかなと一瞬ぼくは心配になってしまうほど)
自由になった牛島くんが「捨てられた、捨てられた!!」と手拍子を打ってはしゃぎだした途端、彼の表情が険しくなり牛島くんに飛びかかりました。水泳パンツ一枚の少年たちは、床の上でしばらく取っ組み合っていましたが、すぐに上に立ったのは濱地くんの方でした。
「アッタマキタ、こいつ泣かす。本気で泣かしてやる」
彼は唇を震わせながらそう言って、牛島くんの背中に馬乗りになり彼の丸い頭を拳骨で何度も殴りかかります、けれど牛島くんは意外と防御に強いのか、両手で後頭部をガードしながら「ママにステラレッタ!スッテラレッタ!」と大声で喚き続けているのです。
多分、ですけど、そのまま時間だけが経過していれば、濱地くんは牛島くんを殴るのを諦め、そして次の日から牛島くんはそのネタで濱地くんを冷やかし続けていたかもしれません。
しかし、濱地くんは牛島くんのように馬鹿じゃないのです。
濱地くんは牛島くんの横腹を掴んで、強引に前に回転させます。
思った通り、牛島くんは床で寝そべったまま勝ち誇ったようにニヤニヤと歯を見せて笑っていて、もう終わりかとでも言うように挑発的に鼻を鳴らします。
濱地くんはそんな彼の両脚を掴みました。どこかに引きずって懲らしめるるのかなと僕は考えました。
多分牛島くんもそうだったと思います。抵抗すらしませんでしたし余裕の笑みを浮かべていましたから。
濱地くんは深呼吸して磯部くんと高藤くんにこう言いました。
「お前ら覚えてる?こいつが幼稚園で漏らしたとき」
二人が反応に困った顔をしていると、今度は濱地くんはニヤリと笑ってその足を牛島くんの水泳パンツに乗せたんです。
「こうやったんだよ」
僕よりも先に彼の意図を理解した牛島くんが足を振り払おうとしましたが、濱地くんの攻撃の方が一足先に早く、彼の股間を踏みつけるようにして乗せてあった濱地くんの体育館シューズが、牛島くんのパンツの上で小刻みに振動しました。
その途端びくんと牛島くんのややふとましい身体(主に腹)が反り返るように、後ろに跳ね上がり、彼は腹の底から甲高い奇声を上げました。まるで生まれたての赤ん坊みたいにぎゃあぎゃあと喚いて、必死に体を左右に捻ります。
多分一般的な子供の力であれば、両手を捕まれていなければ自力で抜け出すことも可能だったかもしれません。ただ濱地くんの力が誰よりも強かったとのことと、残念なことに牛島くんの体が一般の子よりも少し重たいせい、あるいは運動神経の鈍い彼に振りほどくだけの力やコツがなかったこともあり、牛島くんはどう藻掻いても濱地くんの電気アンマから抜け出すことができずにいました。
濱地くんのシューズがグリグリと牛島くんの股間に振動を伝えると同時に、牛島くんのだらしなく緩んだ腹が小刻みに波打つため、正直僕は途中から笑いをこみ上げるのに必死になってしまい、思わず笑ってしまった磯部くんたちは、水着一枚で電気あんまを受けている牛巻くんにすごい形相で睨み付けられていました。
「めろ..や..めろ..!やばいって、本気で...やめろって...」
しかし振動が強くなると、牛島くんはさっきまでとは違う強ばった表情になっていて、訴えるような瞳で濱地くんでそう言いって濱地くんを更に喜ばせました。
「おらおらおら、牛島、お前のタマキン潰れるぞ〜オカマになっちゃうぞ」
高笑いしながら濱地くんは足の振動を更にあげました。
牛島くんが何か言いかけようとしたそのとき、急に彼は目と口を堅くつむり、そして抵抗する仕草をやめました。
「あ」と磯部くんが何かに気がついたように声をあげました。
牛島くんのお尻から透明な液体が漏れ、それがお尻を軸にして辺りに広がっていたのです。
「うお、え、マジで。あ、やべぇ」と高藤くんもそう言って慌てて僕らと何度か目を見合わせました。
残ったのは濱地くんの高い笑い声で、暫くすると水着をオシッコでぐしゃぐしゃに濡らした牛島くんの啜り泣く声だけが舞台裏で静かに響いていました。

プライドの高い牛島くんの涙を見たのは、それが初めてだったと思います。牛島くんはその後、プールの授業には来なかったですが、至って気にする生徒はいませんでした。
授業がより平和になっただけですし、たまにサボったりする子だったので、先生もあまり彼のことは気にとめていなかったようです。
最後のプールの授業は何事もなく終わり、濱地くんは数日後に東京に帰っていきました。
僕が一番驚いたことは、牛島くんのお漏らし事件は他の生徒に、誰一人して知れ渡っていなかったとのことです。
噂が広がらなかったのはこの土地を去る濱地くんの最後の情けだったのか、噂にする程のことでもないと、彼が勝手にそう思っていたのかは僕には想像もつきませんでしたでした。
そう言えば、牛島くんが器具室で漏らした痕跡も、いつの間にか跡形もなく消えてしまっていたし、牛島くんはもちろん、磯部くんたちも一切その話題を出そうとはしませんでした。
しかし濱地くんがいなくなってから、何事もなかったのようにまた威張り始める牛島くんを見ると、少しは広まって欲しかったのに、と思ってしまう僕はきっといたのかも・・・しれないですね。
そんなわけで僕の長いつまらない話もお仕舞い。
その後も、僕らは牛島くんのご機嫌を取りながら、長い長い学生生活を平和に過ごしたのです。ってなんてね。

コメントの投稿

非公開コメント

BOOK



RANKING
創作検索ぴあすねっとNAVI sindbadbookmarks.com
LINKS